もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
部員数13人。
最高成績、地区大会三回戦進出。(内、一回戦の不戦勝を含む)
いわゆる典型的な弱小校だ。
「マッキー、もうちょいトス内側にあげてくれよ。遠すぎて練習にならない」
前衛が走りながら打つ、攻撃的なボレー、ポーチボレーの練習をしていた。
しかし、マッキーの打つ打球は方向もスピードも不安定で思うようにいかないでいるようだ。
「ったく、これだから補欠はよ」
「……ごめん」
後ろで球拾いをしていた八木がマッキーを払いのけてトスをあげる。
早すぎるテンポに難はあるがマッキーよりも遥かに安定していた。
「ドンマイ、ドンマイ」
球出しをしながら八木が声を出す。
それをフェンスの外から見ていた翔太がボソッと呟いた。
「……下手くそ」
「……え?ボレーしてる子達のこと?」
ネットにかけたり、コートから出てしまったりと、なかなか決まらない。
6人がローテーションで打つのだが、誰一人として安定してボレーを決める者がいなかった。
「違うよ、下手なのはボレーヤーじゃなくて球出し。練習でミスるのはほとんどの場合は球だしが悪いからさ。
ちゃんとトスがしっかりしてれば彼らだってもっと速い球でも安定して捕れる」
真剣な表情で見つめながら翔太が言う。
アヤはじっと翔太の横顔を見ていた。
「佐野くんて、やっぱりテニス好きなんだね」
「えっ……あ……」
翔太ははっとして、口を押さえた。
そしてゆっくり歩きだすのだった。