もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
まじまじと快太を見つめる翔太。
「ん?何かついてるかな?」
それに気づいて快太は顔を袖でぬぐう。
「まぁ入っても入んなくても良いじゃん。今は打とうぜ」
ぐっ。とラケットを翔太に差し出す。
「なっ――!!アンタどこまで自己中なの?」
呆れ返るアヤ。
翔太はにっと本当の笑顔を見せた。
「ごめん。これからまだ開けてない荷物の整理とかあるから、早く帰らなきゃならないんだ」
「……んー。なんだそうなのか、じゃあまた今度打とうぜ」
にかっ。と笑う快太に、翔太は背中越しに手を振った。
アヤが翔太の横顔を覗き込む。
「ん、なに?何かついてる?」
「ふふ。別にー?」
アヤの笑顔の意味が分からない翔太が首をかしげると、アヤはまたクスリと笑った。
コートから聞こえる打球音、地面を蹴る音。
全てに背を向けて翔太は帰路に着くのだった。