もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
翌日。
六時間目の社会の授業が終わった。
中田先生は伝説の剣(黒板に書かれた字を指す為の棒)を脇に抱えて出ていった。
翔太が綺麗にまとめられたノートを閉じると、急に机が影にのまれる。
「やっ佐野くん。荷物の整理終わったかい?」
にかっ。といつも通りに笑う快太。
「快太くん……」
「快太で良いよ。今日は打っていきなよ。ね。」
翔太が言葉を返せずにうつむいた瞬間。
たまたま吉川に用事があった幸助が教室に入ってきた。
「……幸助。」
幸助を見つめる翔太。
幸助はすぐに状況を悟ったのだろう。
「翔太。昨日言ってたリズム譜のコピーとってきたぜ。」
たまたま手に持っていたリズム譜を見せながらそう言った。
「ごめんね快太。これから吹奏楽の練習があるんだ。じゃあね。」
「……そっか。」
つまんないの。とでも言いたかったのだろう快太は肩をすくめた。
「幸助ありがとう。」
翔太はポンと幸助の肩を叩いて教室を出ていった。
すると今泉達と話をしていた吉川が幸助に気付く。
「あっ、幸助。ちょうど良かった……」
「あー、悪ぃまた後で来るわ。」
幸助は手を合わせて謝るポーズを取って、すぐに翔太の後を追い掛けていった。