もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~


翌日。

六時間目の社会の授業が終わった。

中田先生は伝説の剣(黒板に書かれた字を指す為の棒)を脇に抱えて出ていった。

翔太が綺麗にまとめられたノートを閉じると、急に机が影にのまれる。

「やっ佐野くん。荷物の整理終わったかい?」

にかっ。といつも通りに笑う快太。

「快太くん……」

「快太で良いよ。今日は打っていきなよ。ね。」

翔太が言葉を返せずにうつむいた瞬間。

たまたま吉川に用事があった幸助が教室に入ってきた。

「……幸助。」

幸助を見つめる翔太。

幸助はすぐに状況を悟ったのだろう。

「翔太。昨日言ってたリズム譜のコピーとってきたぜ。」

たまたま手に持っていたリズム譜を見せながらそう言った。

「ごめんね快太。これから吹奏楽の練習があるんだ。じゃあね。」

「……そっか。」

つまんないの。とでも言いたかったのだろう快太は肩をすくめた。

「幸助ありがとう。」

翔太はポンと幸助の肩を叩いて教室を出ていった。

すると今泉達と話をしていた吉川が幸助に気付く。

「あっ、幸助。ちょうど良かった……」

「あー、悪ぃまた後で来るわ。」

幸助は手を合わせて謝るポーズを取って、すぐに翔太の後を追い掛けていった。

< 28 / 58 >

この作品をシェア

pagetop