もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
「おし、じゃあ一本打ちからいくぞ。」
ざわざわとしてまとまりのない雰囲気。
だらだらと歩きながら部員がコートに入る。
「田口からいくぞ。」
「おーっす。」
一応部活ではあるし、全員入部制とは言え興味があるから選んだテニス部ではあった。
だから自分にボールが飛んでくれば、ある程度真剣に打つ。
「次、斎藤。」
しかし、その次の瞬間。
僅かばかりの緊張感すらどこかへ消え失せ、待っている者で世間話に花を咲かせる。
「……本当ウルサイ。」
人の練習を見て、何かを学ぼうとする者はほんの数人。
今年からテニスを始めたマッキーと快太。
そして副キャプテンの仁木だけであった。
「次、仁木。」
「おぉっ。」
白球が打ち出され、軽やかとは言えないまでも形になったステップでボールを呼び込む。
綺麗に捕らえられたボールは純クロス(自陣右サイドから相手陣左サイド)へと深く決まる。
「ふーん。下手くそチームにも少しはマシなやつもいるんだな。」
球だしをしていたキャプテンの福井の後ろで誰かがそう呟いた。
「あ?何だと?」
そう振り返った福井の顔が震撼するまでに時間はそう掛からなかった。