もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~

いわゆるヤンキー座りで福井を見下ろす。

その威圧感たるや、今まで福井が経験してきた者とは別物だった。

「よお、テニス部に佐野翔太ってやつ居るだろ?呼んでこいよ。」

「……?佐野翔太?」

入ってもいない部員の名前を出されても福井に分かるはずもなかった。

その時、吉川がたまたまテニスコートの側を通りかかり、耳にした。

「……何あいつ。何かヤバイ感じがする。」

走りだした吉川は一目散に三階へと駆け上がっていく。

「あ?何しらばっくれ様としてんだよ。来るまでの間ちょっと遊んでやるから呼んでこいよ。」

そう言ってズカズカとコートに踏み入る。

「とりあえず今居る中で一番強ぇ奴らコート入れよ。」

壁に立て掛けてあった福井のスペアラケットを無断で手に取りそう言う。

「ちょ、何勝手なことしてやがんだよ。先生呼ぶぞ?」

福井のまっとうな言葉に鼻で笑う。

「くっはははは。先生呼ぶぞ?で威嚇になると思ってるのか?小学生の餓鬼じゃねぇんだからよ。」

ざっ。とコートに入った男。

すると数人があることに気付く。

「……なんかアイツ、コートに立ってまた一回り大きくなった気がしないか?」

そう呟いたのは仁木だった。

男は福井と比べてみて、だいたい175センチくらいに見える。

確かに中学生にしてはかなり背が高いが、コートに入った威圧感は180センチにも190センチにも見えてしまいそうな程だったのだ。




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