もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
幸助は首をかしげた。
「まだ揃っていない?」
「そ、そろそろ来る頃だよ」
その時、校舎の端から話し声が近づいてきていることに幸助は気づいた。
ぞろぞろと現れたのは幸助が予想だにしなかった人物達であった。
「あれは……3年の」
現れたのは旧レギュラーの第1ペア第2ペアであった。
「ブランクの抜けない幸助にはぴったりの相手だろ?」
「……お前も凄い人選するなぁ」
現れた前キャプテンの山崎を先頭に旧レギュラー陣が翔太の近くに歩いてきた。
剣幕な雰囲気を醸し出しながら山崎がまずは口を開く。
「お前の為にきたわけじゃない。弱くてもうちらだって部活に真剣な部分もあった。
その部活を中途半端に去っていくことへの、おれらなりのけじめであと三日坊主付き合ってやる」
「ありがとうございます、先輩」
翔太はジャージの上着を脱ぎ捨てる。
そしてラケットを握った。
「勘を取り戻すには実戦が一番。
覚悟は良いよね?幸助」
挑発的な言葉に幸助は声を出して笑った。
「覚悟ってか!お前の方こそ音をあげるまで付き合わせてやるからな」
二人がコートに立つと少し遅れて旧第1ペアがコートに入る。
「5ゲームマッチの勝ち残りで進めます」
「初っぱなから引きずり下ろしてやるよ」
そして日が暮れるまで試合は続いた。
練習試合までの四日間で幸助達が行った試合数なんと16試合。
その中の一度たりとも幸助・翔太ペアが旧レギュラー陣にゲームを奪われることもなかった。