もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
最初はただ楽しくて。
延々と走り続ける基礎トレーニングだって、その後のラケットを握る為に一心不乱に走った。
ボールを打つのが楽しくて。
打球音が心地よくて。
場外ホームランを打って笑うこともあったけど、自分なりに気持ちの良い打球が飛んだときには身体が震えた。
仲間と走るのが嬉しくて。
一緒に上手くなりたいと願いながら、アイツより上手くなりたいと願った。
初めての勝利、格上に自分の弱さを突きつけられた時、予想を裏切る大逆転を果たした時。
どれもが喜びで、それをまた味わいたいと思った。
勝って勝って勝ち続けて、舞台が上がるにつれて違う楽しみも顔を出す。
その頃から登り続ける階段に座り込むライバルの姿を意識し出した。
知らない内に勝ち負けを意識するようになっていたことに気づいた時。
オレは勝つことが怖くなっていた。