たったひとりの君にだけ
だけど、親友の瑠奈には、疲れたから家でゆっくりしようなんて思考は遠い宇宙の彼方、海王星くらいに掛け離れた話なのである。
第一、休日のほとんどはデートで埋まる。(彼氏がいない場合、私を誘って来る)
3連休を迎えようものなら軽く国内旅行、必ずお土産は買って来てくれる義理堅いところはあるものの、嘘でも羨ましいとは言えないのが本音というところだ。
既に意気消沈気味の私とは正反対に、目の前の彼女はやっぱり元気ハツラツで、伝票を手に席を立つ隣の大学生二人組に手を振り始める。
『うるさくてごめんね~』と心にもないことを口にしつつも、あの妖艶な笑みを見せられたら恋愛に疎そうな若造なんて顔を真っ赤に染めるのも無理はない。
ほら、言わんこっちゃない。
ぎこちなく手を振り返し、小さくお辞儀を繰り返す。
照れてるその姿は実に初々しくて、思わず微笑ましくなってしまうくらいだ。
だけど、瑠奈は金銭面に明らかに期待出来ない男には決して手を出さない。
つまり、学生なんて“アウトオブ眼中”だから、これは単なるおふざけに過ぎないのである。
だからこそ、クリスマスに彼氏は何を強請られたんだろうと気になってしまう。
翌日に別れることになるなら、そんなもん買わなきゃよかったと後悔しているに違いない。