たったひとりの君にだけ

「ちゃんと薬買って、栄養ドリンクでも飲んでしっかり寝なさいよ」

「わかってるって」

「寝込んでも看病になんて行けないんだからね」


なんだかんだで心配してくれる。
だからこそ、何年も飽きずに親友なんてやってるんだろうけど。

大学の頃も、互いに体調を崩したときにはアパートを訪れて差し入れをよくしていた。

その際には必ず、瑠奈は葛根湯を購入して来て無理矢理飲ませようとした。
あんなもの、苦くて後味が悪くて絶対に飲みたくないのに、体調が悪い上に鬼の形相で睨まれたら従うしかなかった。

ちなみにお返しとばかりに彼女にも葛根湯を持って行ったけれど、『大好物!』と言って率先して飲まれた日には絶望すら覚えた。

だけど、結局、その根底にはいつだって、思いやりがあったように思う。
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