たったひとりの君にだけ
突然の暴挙に無意識に息を呑みながら。
けれど、腰を抱き寄せられた感覚にゾッとする自分がいた。
「うわ、すっげぇそそられる」
そして、その一言にさえ、悪寒が走った。
「……気持ち悪。離してよ」
「キスしていい?」
人の話聞いてんのか。
「バカじゃないの」
「バカじゃない」
繰り返される無益なやり取り。
何も生まれない。
「いいって言うとでも?」
「じゃあ、無理矢理にでもするか」
そう言って、路上にも関わらず更に腰を引き寄せた。