たったひとりの君にだけ
「似合わない」
そして、もう一度同じ台詞を繰り返す。
より一層、力を込めて真っ直ぐに私を見つめて。
射抜く。
まるでそんな表現がピッタリのようで。
気分は最悪、ただそれだけ。
そして、何が言いたいのか。
やっぱりわかりたくないと思ったのは。
無意味な会話に頭がズキンと痛み、胸の奥が陰り始めたから。
だから、これ以上、ここに居てもいいことはない。
「……高階君は関係ない。私がアンタを好きじゃないだけ」
ただ、それだけのことだ。
「……情も、何も?」
「ない」
無意味な質問、私の即答の後で。
一瞬、樹の顔が歪んだ気がしたけれど。
やっぱり私は気付かないことにした。