たったひとりの君にだけ
chapter.2
クリスマスに素敵な思い出なんてひとつもなかった。
そんな私が、27歳目前にして初めて誰かと二人でクリスマスイヴを過ごした。
だけど、別にデートじゃない。
瑠奈のご期待には添えなかったみたいだけど、決してデートなんかじゃない。
聖夜前日、勢い任せで告白なんぞをされたけど。
それ以来、くだらないメールは寄越せどなんのアプローチもない。(と言っても、それ以来会っていない)
意地を張ってるわけじゃない、単なる事実だ。
だけど私は、それが隣の隣の隣の隣に住む、703号室の住人であることを重々承知している。
そして、彼がエレベーターホールのソファで寝られる男だってことも、キレると津軽弁を話すってことも、クリスマスじゃなくてもいいからデートして下さいなんて言ってのける厚かましい性格だってことも、私は知っている。
なんだかんだ言って憎めないのはどうしてだろう。