たったひとりの君にだけ

すると、メガネ君は人目も憚らず頭を下げた。

ここは外。
嫌な図だ。


「すみません、でしゃばって」

「謝らなくていいですよ。その気持ち、全くわからないってわけじゃないので。親友の恋路は、何か特別な問題がない限りは応援したくなりますよね、わかります」

「……はい」


一応の慰めの後で。

一瞬。
違和感があったような気がしたけれど。

私は気付かなかったことにした。


「……充、そういう話あまりしないから新鮮だったんです」

「昔付き合ってた人の話とかも?」

「はい。アイツ、照れ屋だから」


そういえば。

初めて声を掛けられたときも、物凄く顔を真っ赤にしてたっけ。



「じゃあ、これからも、同じマンションの住人として充をよろしくお願いします」



それもなんか違うな、と思ったけれど、ここは大人になろう。
私の方が年上なんだ。

そう決めた私は百歩譲って頷いておいた。
< 243 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop