たったひとりの君にだけ
すると、メガネ君は人目も憚らず頭を下げた。
ここは外。
嫌な図だ。
「すみません、でしゃばって」
「謝らなくていいですよ。その気持ち、全くわからないってわけじゃないので。親友の恋路は、何か特別な問題がない限りは応援したくなりますよね、わかります」
「……はい」
一応の慰めの後で。
一瞬。
違和感があったような気がしたけれど。
私は気付かなかったことにした。
「……充、そういう話あまりしないから新鮮だったんです」
「昔付き合ってた人の話とかも?」
「はい。アイツ、照れ屋だから」
そういえば。
初めて声を掛けられたときも、物凄く顔を真っ赤にしてたっけ。
「じゃあ、これからも、同じマンションの住人として充をよろしくお願いします」
それもなんか違うな、と思ったけれど、ここは大人になろう。
私の方が年上なんだ。
そう決めた私は百歩譲って頷いておいた。