たったひとりの君にだけ


いつもはこんなんじゃない。

これまでよりも格段にハイスピードな返信をして、私はiPhoneをテーブルの上に置いた。

せっかくの厚意を無にするのは気が引ける。

スッピンに黒縁眼鏡、トレーナーにジーンズだけど、この際どうだっていい。
もっと酷い顔を、私は1ヶ月前に見られている。

きっと、お風呂掃除なんてしてる時間はないんだろうなと予想しながら。
中途半端になっていたエプロンを外してソファの背もたれに無造作に掛けた。

そして、とりあえずトイレでも済ませておこうかなと思っていたのに。

ピンポーンという音に思わず高速で振り返った。


だから早過ぎるんだって!
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