たったひとりの君にだけ

ふらふら状態で玄関へと向かう。
壁伝いに移動しながら、やっとの思いで到着、一息ついた。

あぁ、瑠奈の呆れ顔が目に浮かんで来る。
もしくは、『言わんこっちゃないでしょ!バカだな!』と指を差されて笑われるかも。(アイツは何気に失礼な奴です)

あ、この惨状をバラさなければ済む話だ、そうだ、そうしよう。
簡単な話じゃないか。

熱でショート寸前の頭で自己完結、納得して、ベリーショートのキャメルのムートンブーツを履こうとした。

そのとき、上着のポケットにインしていたiPhoneが震えた。

咳を数度繰り返した後で、画面に触れて送り主をチェックすると、それは隣の隣の隣の隣に住む男からだった。

日付を見て、ようやく今日が1月2日と知る。
知らず知らずのうちに年は明けてしまっていたらしい。

私の年越しは例年になくベッドの中だったとか、笑えるんですけど。
完全に干物化してるんですけど。

“干物女”を世に広めたドラマの主役は私に変えた方がリアリティが出て賢明だと思う。
その際にはオファーお待ちしております。

たった今届いたメールの他にも、溜まりに溜まったメールのほとんどは新年あけましておめでとうございますだと思われる。

なんだよ、こっちは忙しいんだよと心の中で悪態をつきながら、なんとなく開封した。


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