たったひとりの君にだけ
頭を悩ませていると、突然泡が飛んで来た。
「……っ」
思わず身を引いて、反射的に微かに声を上げると。
案の定、大袈裟なほどの大声で気遣いをされる。
「大丈夫ですか!?」
無礼を承知で、うるさいと思わず口にしてしまいそうなボリューム。
「だ、大丈夫……、レンズについただけ」
大袈裟だよ。
大袈裟なんだって。
決して声には出さず、心の中で反論してゆっくりと眼鏡を外す。
すると、ぼやけた視界のまま顔の角度を元に戻すと、至近距離で視線がぶつかった。
その瞬間。
心臓が。
大きく音を立てた。