たったひとりの君にだけ

頭を抱えるしかないと思った。

あの後、タイミングを見計らったかのように預言者から電話が来たことさえも。

しかも、第一声が『ミツオとどんな感じ?』だったもんだからエスパーとしか思えなかった。

それか、しれっとズルでもしているか。

隠しカメラでも設置されているんじゃないかと、思わず部屋中を見渡してしまったほどだ。


そして、結果的にしどろもどろになった私は、勘の鋭い瑠奈の厳しい取り調べを受ける羽目になり。
観念した末の苦し紛れの一言。
『予言どおりかもしれない』とボソッと口にすると、『今更気付いたの?おっそ』とバカにされた。


その言い草に、怯み、けれど直後にイラッとした私は、それ以上突っ込まれるのを恐れて、非情と知りつつ『じゃあね!』と言って電話を切ってやった。

その後も2回ほど掛かって来た電話。
意地を張って一度も出ずにいると、降参したのかメールに切り替わり、『お前はもう恋してる』と絵文字顔文字なしの一文が送られて来た。

読んだことはないけれど、ケ○シロウの名台詞のパクリかと思った。

言われなくてもわかってるっての!


だけど、もしかしたら瑠奈は、私にいろいろと愚痴りたくて電話を掛けて来たのかもしれない。

ただ、素直に泣きつくことが出来なくて、だから第一声があんなふざけたものになってしまっただけで。

そう思うと、本当に申し訳ないことをしたと思う。


それでも、困っているのはこっちも同じだからわかってほしい。
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