たったひとりの君にだけ
たとえ、好意を抱いてくれているとわかっていても。
「……勘、かな」
思い切り言葉を濁す。
イチから話すのが面倒というよりも、既に身包みを剥がされることに耐えられなくなっている気がした。
少しは開放的になったとはいえ、これ以上は難しいと。
私も大概、気が短い。
そして、呆れたのか実加ちゃんは再度、大きな吐息を漏らす。
失礼だな、と若干思ったけれど、当然と言えば当然で。
第一、それは本当に一瞬の出来事で。
即座に掻き消されたのは。
懲りずにまた、心臓が鈍く重い音を立てたからであって。
「じゃあ、どうして遠いって決めちゃうんですか?」
中枢を、深くえぐられた気分だった。