たったひとりの君にだけ

「でも、これでも結構驚いてるんですよ」

「何が?」


むくれながら低音で聞き返すと、一際明るい声でこう言われた。



「メグ先輩、案外わかりやすいんだなって!」



それ以上言わないでほしい。
怯むしかなかった、こんな私はマヌケとしか言いようがないのだから。

だけど、少なからず身に覚えがあるのは。
近藤瑠奈にも言われたことがあるからであって。

私は一皮向けるとわかりやすいと。
何がきっかけでそう思われたのか、今となっては覚えていないけれど。
というか、多分、記憶の中から自動で抹殺されているんだと思うけど。

声が大きいと注意したかったけれど負けそうだ。
そして、彼女はトドメを刺した。




「好きなんですね、その人のこと」




耳が痛い。


「……知らない」

「はいはい」


生意気な後輩だ。
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