たったひとりの君にだけ
不敵な笑みを浮かべる彼女を真横に、私は腕組みをして立っていた。
けれど、やっぱり逃げちゃおうかなという考えが脳裏をよぎったところで引き止められる。
「私だって、宇宙人とか二次元相手なら多分ちょっとスルーしますけど、でも、メグ先輩見てればそういう人が相手じゃないんだなってわかりますし」
当たり前だと叫びたくなった。
そんな得体の知れない物体に好意なんて抱くか。
「……そうだよ。宇宙人なんかじゃないよ」
私が好きだと気付いたのは、あくまで生身の人間で。
間近で覗き込まれて、触れることだって出来る存在。
重なりはしなかったものの、そうなってしまうんじゃないかと。
一瞬でも思い、鼓動を速めてしまった相手。
思わず本音を零したところで、彼女が視線を下に落としていることに気付いた。
「……ごめんなさい」
「え?」
「先輩相手に強く言って。しかも失礼なことばかり」
「いや、それは全然いいんだけど」
「ありがとうございます。……でも」
言いかけた彼女に先を促すと、ゆっくりとこう呟いた。
「……なんであったって、決め付けて諦めちゃうのは絶対ダメだから」
過去に何かあったんだと、こんな私でもわかるような言い草だった。