たったひとりの君にだけ
「いでっ!」
……あれ、何かにぶつかった、気がする。
あぁ、気がする、じゃなくて、ぶつかったんだ。
だって、ドアがこれ以上開いてくれない。
「痛ってぇ……って、あぁ!芽久美さん!あけましておめでとうございます!」
僅かに開いたドアの隙間から覗く、額に手を当てた一人の男の姿。
許可もなくドアを引いて、私としっかり対面しようとする。
相変わらず厚かましい。
ここ、一応女性のお部屋ですけど。(宅配のおっちゃんを見習ってよ)
それよりも。
今からって本当に今からだったのかい。
有限実行にもほどがあるでしょうが。
新年早々、相変わらずの元気っぷりに圧倒されて、深々とお辞儀をする丁寧っぷりには何も返せない。
だけど、その面の皮の厚い顔を見て気付いた。
あ、髪、切ったかもしれない。