たったひとりの君にだけ
直後にオードブルが運ばれて来て、目の前に静かに置かれた。
なんて言ったかよくわからなかったけれど、魚介と色鮮やかな野菜が実に美味しそうな印象だ。(私も大概、表現力に乏しい)
そして、ワインを一口、体内に流し込んだ後で。
早速、目の前のご馳走にありつこうとする樹をしっかりと捉えながら。
告げるべきことを告げる為に。
私は、口を開く。
「……樹」
「ん」
「私、フランスには行かないから」
樹の手が止まった。