たったひとりの君にだけ

すると、一向に答えない私に痺れを切らしたのか、樹は大胆に溜息をついた。

もしくはただ、諦めたのかもしれない。


「クリスマスが嫌いな奴なんて初めてだ。ちなみに、クリスマスが嫌いだから別れようって言われたのも」

「……わかってる」

「わかってるなら、詫びとしてフランスに来いよ」

「それは出来ない」

「勝手だな」

「……っ、でも、これは、これから先の人生に関わることだから、……申し訳なさひとつで移住することは、私には出来ない」


本音を、意志を、そのまま口にすると樹は黙った。
微かに覗き見ると、彼は豪快にオードブルを片付けているところだった。

今までの身勝手を、自分勝手を。
私はまとめて目の前に座る神村樹に謝罪することで済ませようとしている。

都合がいい。

むしろ、なかったことにしたいという思いさえある私はこの期に及んで身勝手だ。


だけど今は、私同等に樹の言い分が、私の気持ちを蔑ろにしているように思えてならない。
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