たったひとりの君にだけ

だけど、グラスを静かに置いて、次は何を飲もうかと思考を巡らせながらチラッと瑠奈の様子を伺うと、何故かそこには予想外の仏頂面があった。


「……なんで先に喋っちゃうわけ?」

「は?」


唸るような低音を、私の優秀な聴覚がかろうじて捉えた。


「普通喋らないでしょうが」


そして、紙袋を指差しながらのその一言で、私は彼女の言わんとすることを察知した。

なんだ、そういうこと。


「だって、ここで広げて汚してほしくないもん。私だって欲しかったんだから」


パッチリ二重を細めて人相悪く睨まれても、私は決して微動だにしない。


「だからってプレゼントの醍醐味を奪わないでよ」

「それはそれは、どうもすみませんでした」

「ま、でもありがと。これ欲しかったの」

「どういたしまして。私のときは3倍返しでいいから」

「厚かましっ!せめて倍返しで許して」

「流行語大賞かい」

「やっぱり獲ったよね」

「ま、当然だよね。私は見なかったけどね」


ちなみに、時代の流れに逆らって、じぇじぇじぇも一話たりとも見ることはなかった。

Blu-rayレコーダーは一応持っているけれど、ドラマは見続けるのが億劫だったりする。
自宅では主に、TSUTAYAでレンタルした映画(お気に入りは洋画ラブストーリー)を鑑賞する。
気に入った映画はAmazonまたは楽天でBlu-rayを注文して、ベッドルームのブラウンのラックに飾っておく。

長々と見るより、スパッと2時間で終了の方が気が楽なのだ。
< 4 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop