たったひとりの君にだけ
ガチャリと聞こえて反射的に顔を向けた先。
リビングから漏れる明かり。
少し開いた扉から見える人影。
「あ、起きました?」
その声はラーメン談義に華を咲かせたときのように明るくて、いつもの調子だとすぐにわかった。
「お粥あるんですけど、食べますか?」
あぁ、そういえば私、多大なるご迷惑をお掛けしていたんだっけ。
「食べられます?」
「……うん、食べる」
その3文字を耳にした瞬間、聞こえずともぐぅ~っとお腹が悲鳴を上げたような気がした。
久方振りの食事にありつけるとわかった私の胃は正直だ。