たったひとりの君にだけ
時刻は夜の9時を過ぎている。
確か、高階君からメールが来たのが7時近くだったから、あれから2時間以上経ったのか。
薬もなし、冷えピタもなし、栄養ドリンクもなし。
風邪が治るような代物は一切なかったのに、不思議と2時間前より体が軽くなっている。
気付けばナイトテーブルの上にはミネラルウォーターが置かれていて、彼が一度この部屋に入ったんだと伺える。
絶対に寝顔を見られたな、と憂鬱な気分に襲われながらも、親切心故の行動を責めるわけにはいかない。
握力の落ちた手でキャップを回して、ゆっくりと体内を潤した。