たったひとりの君にだけ
ほんっと、心の声を読まれるって恥ずかしくて苦手だ。
「うるさい」
「あ、でも出しといたほうがいいのかな」
「は?」
「もったいないですよね、このシチュエーション」
さっきから思ってたけど、心の声がダダ漏れ過ぎる。
抑えなさいよ。
我慢しなさいよ。
思ったことを思うがままに口にするなんて、絶対に大人のすることじゃないんだってば。
だけど、本当はわかっている。
言葉とは裏腹に、高階君には全くその気がないこと。
だって、それ以上、少しも私に近付かない。
ベッドに手をついたりもしない。
やっぱりニコニコ笑うだけだった。