たったひとりの君にだけ

「実家でちゃんと癒されて来たの?」


彼女のデスクに若干寄り掛かって、新年一発目のトークを楽しむ。

コミュニケーションは重要だ。
トレーナーという立場においては、特に。

すると、僅かではあるものの、予想外にその表情が曇っていることに気付いた。


「どうしたの?違うの?」

「う~ん……そのつもりだったんですけどね、いろいろこき使われて、甥っ子姪っ子にはお年玉せがまれるし、痛々しい年明けでした」


ああ、なるほど、と思わず納得してしまうのは、もはやそれがある程度の宿命だと感じるからだ。


「子供のくせにしっかり去年の額覚えてるんですもん、嫌になっちゃいますよ!おかげで金欠です」


どこかで耳にしたことのある台詞に笑みが零れる。
大家族の親友も、去年、思う存分愚痴っていた気がする。

『年を追うごとに金額が増える!』『破産する!』、だったっけ。


「冬のボーナス飛んじゃったんだ?」

「まぁ、そんな感じです」


それでも、私のありえない冗談に苦笑する彼女の顔が、なんだかんだ言いつつ血色がいいように思えるのは決して気の所為ではないだろう。

怒涛の師走を乗り越えたときの彼女は今にも死にそうな顔をしていたけれど、結局は暖かくて温かな九州で、存分にリフレッシュ出来たんだろうなと思う。
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