たったひとりの君にだけ

「付き合ってくれる?」


途端に実加ちゃんの顔がぱっと明るくなった。


「いいんですか!?」

「うん。確か、真智子ちゃん達は長めの朝礼終わった後すぐ外行っちゃうから、実加ちゃんだけかな。じゃ、二人で」


毎週奢っているわけじゃない。
それはさすがに金欠まっしぐらだから困る。
そんなに高給取りではないのだ。

ただ、年始始め、志気を高める為にはこれぐらいの出費は許容範囲内だ。
むしろ経費と言えよう。

実加ちゃん以外の彼女達には後日、例えば営業先への同行の空き時間に、新しいお店の新規開拓を共に楽しめばいい。


「さすがメグ先輩!じゃあ、ご馳走になります」

「うん。有難くご馳走になって。宝くじ当たったからね、どーんと来いだよ」

「え!本当ですか?2014年幸先いいですね」

「まぁね」

「幾ら当たったか聞いてもいいですか?」

「3300円」


間髪入れずにそう答えた瞬間、実加ちゃんの表情がわかりやすく曇った。


「び、微妙じゃないですか?」

「3000円買って3300円当たったんだからプラスよ。なんて素晴らしい」


寝込んでいて当選発表を忘れていた年末ジャンボ宝くじ。
前後賞合わせて7億円に夢を見て、売り切れ寸前に連番1セットを購入した。

病院に行った帰りに気付き、ネットで調べてチェックした結果、生まれて初めての黒字決算に大喜び。
年末年始、充分に苦しんだ私へのご褒美に違いない。
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