たったひとりの君にだけ
すると、同じくブラックを飲んでいただろう樹は、静かにカップを置いて、頬杖をつきながら唐突に切り出した。
「で、まだクリスマス嫌い続いてんの?」
ニヤニヤしながら問い掛ける樹は性格が悪いとしか思えない。
それこそ、付き合っていた頃より、ずっとずっと。
「どうでしょうね」
「お前も酷い奴だよな。俺の転勤の話聞いた瞬間、速攻で別れようだもんな。動揺とか同情とか、そういう人間的感情はなかったのかよ」
「別に」
悪目立ちの名言を残したところで、念願の飲み物が運ばれて来た。
ゆっくりと体の芯から温める。
コーヒーはブラックに限る。
特に、物事に集中したいときのマスト用品だ。