君のそばにいてもいい?

夏祭りが終わり、帰ろうとすると

「送るよ」

と桐谷が言ってくれた。

そんな優しさに一喜一憂してしまう自分が憎い。

…もう恋はしないって決めたのに。

でも好きっていう気持ちが溢れて…
止まらない。どうしたらいいの…?

と思っていると

「…今日は楽しかった!ありがとう。
ごめん、僕のわがままに付き合わせて…」

こういう気遣いにもきゅんとくる。

…桐谷のばか。これ以上好きにさせないでよ…

「わがままなんてそんな…私も楽しかったし!こちらこそ、ありがとう」

私がそう言うと、

「そっか、良かった」

と優しく笑ってくれる。

「…っ…」

"好き"という言葉が喉まで出かかった。


……苦しい。苦しいよ。

好きって言いたくても言えない。

「…っあ…家、ここだから…」

「あ、うん!本当に今日はありがとう。
…おやすみ」

「い、いえいえ!こちらこそ!!おやすみ!」

私は無理に笑顔をつくる。

上手くできたかな…?

すると私の瞳にはなぜか涙が溢れていた。

「あれ?今日はすごく楽しかったはずなんだけどな…なんで、涙なんかが出てくるんだろ…?」


涙が止まらない。

私は初めて知った。
"好き"って言えないことの辛さを。


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