君のそばにいてもいい?


「…葉月?どうしたの!?」

教室で1人、へたり込んでいた私に雅が声をかけた。

「…雅」

「ん?」

「…私、雅に言わなきゃいけないことがあって…」

「うん」

雅は私に何があったかを無理に聞こうとせずにいてくれている。

ありがとう…雅…

「…私ね、桐谷のことを好きになっちゃったの。」

すると雅は驚く素振りを見せず、ただうん、と言うだけだった。

「気付いてたの…?」

「薄々は…」

「そっか」

私はふっと笑う。
そして、

“でも、諦める”

ということを言おうとすると…

「まさかとは思うけど、諦めるとか思ってないよね?」

と雅に言い当てられてしまった。
私は否定できずに黙っていると

「…どうして諦めようとするの?」

雅が私にそう問いた途端、私は涙が出そうだった。

「私…彼氏がいたの…でも、傷つけてしまった。だから私に恋する資格なんてない…!」

私がそう言った途端、雅が私の頬を叩いた。

「…バカじゃないの」

雅は心の底から怒っているようだった。

「その元彼も葉月が恋愛しないことを望んでるわけないでしょ!?
それに…葉月はその元彼を利用して逃げてるだけじゃん…!」

“逃げてるだけ”

私は雅のその言葉に気が付いた。

そうだよ…私…逃げてるだけじゃん。
しかも元彼を利用して。

「雅…私…」

すると雅はそっと抱きしめた。

「…それだけじゃないんでしょ?」

「え?」

「桐谷を諦めようとした理由」

もう雅には何も隠し事はできない。
全部雅にはわかっているのだろうか。

「…さっき」

「うん」

「麻結美ちゃんに協力して欲しいって言われて…麻結美ちゃんは桐谷のこと好きらしくて…」

「…うん」

「だから協力しなきゃ…って」

「…そっか」

すると雅は私の背中をさする。

「辛かったね」

と優しい声で言ってくれる。

私はその言葉を聞いて涙が溢れて止まらなくなった。

「そういえば、麻結美ちゃんに協力するって言ったの?」

と私の背中をさすりながら聞いてきた。

「ううん。その時何も言えなくて。
そしたらお返事待ってるねって言われちゃった」

「そっか。」

と雅は納得すると

「…葉月は」

「?うん」

「桐谷のことを…諦めたくない?」

私はそれを聞かれてドキッとした。

「…私、は…」

…もう絶対迷わない。決めた。

「桐谷のことを諦めたくない…!」
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