純情乙女の番外編
「やけに静かだな」

「最近の車ってすごいんですね」

「違う。あんただよ」

「えっ、私?」

思わず横を向くと、こっちを向いた佐々岡さんと目が合った。
仕事のときとは違う、少しだけ優しい目をしている。
なんだか気恥ずかしくて、すぐに前を向いた。

(何か調子狂っちゃうな…)

「いつもプリンターの調子が悪いってキーキー騒いでるくせに」

茶化されてムッとしたけど、不思議と嫌な感じはしなかった。



さっき、私のこと北村って呼んだ。


今までそんな風に言われ慣れていないので、反芻(はんすう)する度にドキドキする。

おかしいよ、これって…。

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