少女達は夢に見た。
「知らないよ!そんなこと。」


私が叫んでも、柚奈はなにも言わない。


駄目だ。


気持ち悪い。


息があがる。


落ち着かせようとしても、よけいに呼吸が乱れるだけ。


「あたしよりね、一瑠の方がタイプなんだって。」


嘘だ。


嘘だ。


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

「嘘だ!!」


そんなの、信じたくない。


親友の恋。


あんなに嫌だったのに。

あんなに、さみしがったくせに。


それでも、応援しようって、決めたのに。


柚奈が変わるのが、怖かったけど。


いざ、こんなことになると。


どうして、どうしてこんなに…


苦しくて、


辛くて、


悲しいんだろう。


私、


心から柚奈の恋を応援していた訳じゃないのに。

こんなに、


悲しい。


「ね?一瑠は悪くないでしょ?」


「私が悪いじゃん。」


どう考えても、柚奈を傷つけたのは、私。


「一瑠は悪くない。」


「なんで?」


あきらかじゃん。


「だから、言ったでしょ。気づいてたんだって。」


「なによそれ…。」


「好きになった瞬間。風見君を見てて、そう思った。わかりやすいもん。態度に出てた。」


「あたしが悪かったの。それでも、告白したかったの。」


だから、あの時、あんな顔したんだ。


私が、柚奈が告白して、付き合ったりしたりしちゃうのが寂しい…なんて言ったとき。


それに時々、煮え切らないような表情をしてた。

あれは、柚奈からのSOSだった?


私が、勇気を出して聞いていれば良かった。


「分かってても、嫌だったの。なんか、罪悪感っていうか…。一瑠と向き合うのが、辛くて。」


「そう…だったんだ。」

もし、歩乃香とのことがなかったら。


私は、ずっと被害者なんだと思ってた。


柚奈だって、辛いんだって、ずっと気づかなかった。


「私、どうしたらいい?柚奈に、何をしてあげられる?」


理由が分かったからって、柚奈とこのままなのは嫌だ。


「風見君のこと、好きにならないで。」


なんだ。


そんなことか。


余裕余裕。


「できれば喋らないで。」


「え。」


「できない?」


部活がある日は、苦しいかも。


でも、柚奈のためなら!!

「出来るよ。私を信じて。」


「本当?」


「うん。柚奈をフッた…柚奈を傷つけた風見君を、許してなんていないから。」


あ。


やばい。


余計なことを言ってしまった。


怒ったかな?


「一瑠、可笑しい!」


ひやひやしたけど、笑ってくれた。


「柚奈のためなら、なんでもするよ。」


「わがまま言っても?」

「柚奈のわがまま訊けるなら、嬉しいよ。」


本音だった。


「一瑠、ありがとう。あんな態度とって、ごめん!」


また声が震えてる。


「ううん。柚奈の本音が聞けて嬉かったよ。」


本当に、幸せ。


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