少女達は夢に見た。
第5章 歪な友情
〈よくよく考えてみれば、柚奈に冷たい態度を取られたのは、
たった1週間にも満たない期間だった。
なのに私は、あんなに取り乱して。
歩乃香やアキ、さらには先輩までに心配かけちゃって。
もしかしたら私は、ずっと前から
柚奈に依存してたのかもしれない。〉
そこまで書いて、ため息をついた。
そうだ。
もう認めてしまえ。
電話をきった後、しばらく顔がゆるみきってしまった。
しかも、ちょっと泣いた。
よく分からないけど。
友達にここまで乱されるなんて、私は重い女なのだろうか。
日記を読み返してみれば、よくわかる。
さすがに柚奈も引くのでは、と思うくらいに、柚奈のことばかりだ。
恵瑠に読まれでもしたら、今すぐこの2階の窓から飛び降りる。
まだ死にたくはない。
だから死なないために、日記を本棚の奥底へと押し込んだ。
散々喜んだわけだけども…
いきなり元に戻ると期待した私が甘かった。
あろうことか、柚奈は、まだ斎藤組にいた。
しかも朝っぱらから。
これ以上どうしろと。
もう理由も結果も分かったし。
私がやるべきことはもう…。
いや。
まだあった。
正確に言えば、やってはいけないこと。
火曜日は美術部活動日。
いつもどおり、その時間はやってくる。
まあ近寄らなければいい話だ。
心を落ち着かせ、美術室に入る。
「失礼しまーす…。」
あれ。
なんで。
ちょ。
え。
なぜ。
「なんですか。そんな『しまった』みたいな顔して。」
ジーザス。
どうして彼がここに居るんですか。
いや、同じ美術部だから当たり前か。
そうじゃなくて。
ここに彼しか居ないことが問題なんだ。
「先輩方なら職場体験の説明会とかで遅くなるらしいですよ。」
職場体験?
なにそれ。
これって…。
結構まずいシチュエーション。
なにも言えずに扉の前で硬直する私を見て、眉をひそめた。
なんで柚奈に風見君と口利かないでって言われた初日から、
二人っきりなんて珍しいシチュエーションになるの!?
誰の陰謀(いんぼう)よ?
まさか。
これは私を試してる?
そうか。
ならば簡単なこと。
徹底的にシカトだ。
黙って自分の席に向かう。
風見君はすこし驚いたようだ。
そう。
同情的になんかならない。
可哀想とも思わない。
なにを隠そう彼は親友をフッた男。
傷つけた男。
それに私があんな態度を柚奈に取られたのも、もとを辿れば風見君のせい。
いや。
そうじゃなくとも、
親友の彼氏になる予定だった男…。
思考が真っ赤に染まり始めた頃、
彼が溜め息を漏らした。
「…無視ですか。」
情けなんて、かけてやるもんか。
たった1週間にも満たない期間だった。
なのに私は、あんなに取り乱して。
歩乃香やアキ、さらには先輩までに心配かけちゃって。
もしかしたら私は、ずっと前から
柚奈に依存してたのかもしれない。〉
そこまで書いて、ため息をついた。
そうだ。
もう認めてしまえ。
電話をきった後、しばらく顔がゆるみきってしまった。
しかも、ちょっと泣いた。
よく分からないけど。
友達にここまで乱されるなんて、私は重い女なのだろうか。
日記を読み返してみれば、よくわかる。
さすがに柚奈も引くのでは、と思うくらいに、柚奈のことばかりだ。
恵瑠に読まれでもしたら、今すぐこの2階の窓から飛び降りる。
まだ死にたくはない。
だから死なないために、日記を本棚の奥底へと押し込んだ。
散々喜んだわけだけども…
いきなり元に戻ると期待した私が甘かった。
あろうことか、柚奈は、まだ斎藤組にいた。
しかも朝っぱらから。
これ以上どうしろと。
もう理由も結果も分かったし。
私がやるべきことはもう…。
いや。
まだあった。
正確に言えば、やってはいけないこと。
火曜日は美術部活動日。
いつもどおり、その時間はやってくる。
まあ近寄らなければいい話だ。
心を落ち着かせ、美術室に入る。
「失礼しまーす…。」
あれ。
なんで。
ちょ。
え。
なぜ。
「なんですか。そんな『しまった』みたいな顔して。」
ジーザス。
どうして彼がここに居るんですか。
いや、同じ美術部だから当たり前か。
そうじゃなくて。
ここに彼しか居ないことが問題なんだ。
「先輩方なら職場体験の説明会とかで遅くなるらしいですよ。」
職場体験?
なにそれ。
これって…。
結構まずいシチュエーション。
なにも言えずに扉の前で硬直する私を見て、眉をひそめた。
なんで柚奈に風見君と口利かないでって言われた初日から、
二人っきりなんて珍しいシチュエーションになるの!?
誰の陰謀(いんぼう)よ?
まさか。
これは私を試してる?
そうか。
ならば簡単なこと。
徹底的にシカトだ。
黙って自分の席に向かう。
風見君はすこし驚いたようだ。
そう。
同情的になんかならない。
可哀想とも思わない。
なにを隠そう彼は親友をフッた男。
傷つけた男。
それに私があんな態度を柚奈に取られたのも、もとを辿れば風見君のせい。
いや。
そうじゃなくとも、
親友の彼氏になる予定だった男…。
思考が真っ赤に染まり始めた頃、
彼が溜め息を漏らした。
「…無視ですか。」
情けなんて、かけてやるもんか。