少女達は夢に見た。
第7章 仲良しな4人
「おはよう、一瑠ちゃん」


「歩乃香、早いね」


私が待ち合わせ場所着くと、すでに歩乃香がいた。


さっき携帯を確認したら9時40分だったから、


待ち合わせの20分前よりも早く来ていたのか。


住宅街にあるマンションの一角。


4人の家の位置を考えて設定したら、あまり目印のない場所になった。


それにしても、


「やっぱり可愛いね」


「え?」


「私服」


私の言葉に自分の姿を確認する。


その動作ひとつをとっても女の子らしい。


黒のトップスに白いひらひらしたスカート。


茶色のベルトでハイウエストにしている。


この間とはまた違うピンクのサンダル。


歩乃香は少し恥ずかしそうにうつむいて、


「一瑠ちゃんの方が……
おしゃれだと思う」


言い終えると、顔を少しだけあげて、はにかんだ笑顔を向けた。


「そんなことないよ。」


自分が褒めるのはいいけど、褒めあったりするのはちょっとくすぐったい。


「ううん。可愛いよ。そのシュシュとかも似合ってる。」


「これ?柚奈がくれたんだよ。」


去年の誕生日に。


自分で触れてみて確かめる。


「気に入ってるんだ?」

「そりゃあね!」


柚奈のくれたものだし。

だから似合ってると言ってもらえてすごく嬉しい。


「……じゃあ、わたしも一瑠ちゃんの誕生日にはシュシュをプレゼントしようかな。」


歩乃香の呟きは、どちらかというとぼやきに近かった。


「どうして?」


少し考えてから、意味深に、ふふっと笑う。


「やっぱりポニーテールにはシュシュでしょう?」


……そういうものなのか?

よくわからなくて、愛想笑いで誤魔化した。





「アキと柚奈、遅くない?」


あと5分で待ち合わせの時間になってしまう。


歩乃香にそう言いながら曲がり角を確認する。


あれ……?


あそこで歩いてる人って……。


その人はこちらに気付き、走り出した。


速い。


「歩乃香、来たよ。」

私がそっと歩乃香に教える。

「え?」

振り返ったと同時に、私と歩乃香の名前を大声で叫んだ。

さすが1年の時に応援団をやっていただけある。

通りすがりのお婆ちゃんが微笑ましそうに私を見て笑った。


恥ずかし。


5メートルくらいの距離になり、私達からも駆け寄る。


私と歩乃香が「おはようアキ」と声をかけても、

息ひとつ乱さずに返事をした。


現役陸上部の力恐るべし。


「アキ髪ぼさぼさ」


保護者歩乃香。


アキの髪を整える。


息は乱さずとも、髪型はそうはいかなかったらしい。


ショートだからはねやすいのかもしれない。


「くし持ってないの?」

「持ってないよー。」


「鏡は?」


「ぼくが持ってるわけないじゃーん!」


能天気に笑うアキに歩乃香は大きくため息をついた。


「あんたねぇ、少しは女の子らしくしなさいよ。あんなに全速力ダッシュしなくていいから!」


「やだー、いっちー歩乃香がこわーい!」


柚奈、まだかなー……。


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