少女達は夢に見た。
「お前が勝手に決めたんだろ!」
「はあ?ちゃんと悟志にも訊いたでしょ!?」
「形だけな」
渡辺くんは腕をくみながらあきれ気味に鼻で笑った。
「奏汰は?」
友紀ちゃんの鋭い視線が今度は風見くんにむけられた。
「勝手に進めるのはいいですけど、協力はしませんよ」
クールに言いはなつ。
さすが風見くん。
張り詰めた空気が流れる。
場違いな掛け声が外から聞こえ、カナンの顔をみた。
心なしか、愉(たの)しそう…?
「溝口ちゃんも反対なの?」
「わ、私!?」
半ば傍観者気分になっていた私。
びっくりして思わず立ち上がってしまった。
これはまずいぞ。
友紀ちゃんの目が赤くなっている。
「えっと…えー…」
「ハッキリ言ってよ!」
「はい!!」
彼女の声に肩が上下した。
声も裏返り、もうだめだ…誤魔化せない。
だからちゃんと伝えよう。
ここで勘違いされたくない。
言わなきゃ…いけない。
圧力で声まで押し潰されそうだ。
しかし期待の視線がつきささっている。
誰だこの視線は。
唾を大きく飲み込んで、息を吸った。
その音さえ聞こえる。
脳を美術室の扇風機のようにフル稼働させ、言葉を、紡ぐ。
「演劇は良いと思う。けど!」
そこで呼吸を整えてから、続けた。
「みんなの意見を、もっときいてみたいな」
友紀ちゃんは黙りこむ。
まだ続けなきゃいけない気がする。
「少数の意見も、大事だと思うの。やるなら全員一致でやりたい」
渡辺くんと風見くんに視線を合わせ、
友紀ちゃんをまっすぐに見つめた。
それでもなにも言うつもりはないのか。
顔をそむけられる。
そこではじめて、言い終えても口呼吸になってしまっている自分に気付いた。
軽く左手首に手を添えれば、脈拍がえらくあがっている。
「あー…今日はもう解散ね」
「解散って…」
「また今度ねー」
投げやりな風に美術室から出ていった。
「なにそれ…」
「え…どうするの?」
ちらほらと部員たちの呟きが聞こえる。
どうしよう…。
「次期部長さんが帰っちゃんたんだから、こっちも帰ろうよ」
カナンの“次期部長さん”は、とても皮肉めいて聞こえた。
重苦しい雰囲気に誰も動けないでいるなか、
カナンはなんのことなく美術室から出ていく。
ざわつきながら、1年生も帰っていった。
私も帰ろうとしたとき、
「一瑠さん」
その声に過剰に反応し、90度横に向いた。
「ありがとうございました」
――夏の風
カーテンを大きく膨らまし、
本のページを何十ページ先に進め、
先輩を困らせた、
あの風。
彼が、吹かせた。
「あ、もう話してもいいですか?」
「うん…いいよ」
無理矢理に、笑顔を見せた。
風見くんに、向けて。
「はあ?ちゃんと悟志にも訊いたでしょ!?」
「形だけな」
渡辺くんは腕をくみながらあきれ気味に鼻で笑った。
「奏汰は?」
友紀ちゃんの鋭い視線が今度は風見くんにむけられた。
「勝手に進めるのはいいですけど、協力はしませんよ」
クールに言いはなつ。
さすが風見くん。
張り詰めた空気が流れる。
場違いな掛け声が外から聞こえ、カナンの顔をみた。
心なしか、愉(たの)しそう…?
「溝口ちゃんも反対なの?」
「わ、私!?」
半ば傍観者気分になっていた私。
びっくりして思わず立ち上がってしまった。
これはまずいぞ。
友紀ちゃんの目が赤くなっている。
「えっと…えー…」
「ハッキリ言ってよ!」
「はい!!」
彼女の声に肩が上下した。
声も裏返り、もうだめだ…誤魔化せない。
だからちゃんと伝えよう。
ここで勘違いされたくない。
言わなきゃ…いけない。
圧力で声まで押し潰されそうだ。
しかし期待の視線がつきささっている。
誰だこの視線は。
唾を大きく飲み込んで、息を吸った。
その音さえ聞こえる。
脳を美術室の扇風機のようにフル稼働させ、言葉を、紡ぐ。
「演劇は良いと思う。けど!」
そこで呼吸を整えてから、続けた。
「みんなの意見を、もっときいてみたいな」
友紀ちゃんは黙りこむ。
まだ続けなきゃいけない気がする。
「少数の意見も、大事だと思うの。やるなら全員一致でやりたい」
渡辺くんと風見くんに視線を合わせ、
友紀ちゃんをまっすぐに見つめた。
それでもなにも言うつもりはないのか。
顔をそむけられる。
そこではじめて、言い終えても口呼吸になってしまっている自分に気付いた。
軽く左手首に手を添えれば、脈拍がえらくあがっている。
「あー…今日はもう解散ね」
「解散って…」
「また今度ねー」
投げやりな風に美術室から出ていった。
「なにそれ…」
「え…どうするの?」
ちらほらと部員たちの呟きが聞こえる。
どうしよう…。
「次期部長さんが帰っちゃんたんだから、こっちも帰ろうよ」
カナンの“次期部長さん”は、とても皮肉めいて聞こえた。
重苦しい雰囲気に誰も動けないでいるなか、
カナンはなんのことなく美術室から出ていく。
ざわつきながら、1年生も帰っていった。
私も帰ろうとしたとき、
「一瑠さん」
その声に過剰に反応し、90度横に向いた。
「ありがとうございました」
――夏の風
カーテンを大きく膨らまし、
本のページを何十ページ先に進め、
先輩を困らせた、
あの風。
彼が、吹かせた。
「あ、もう話してもいいですか?」
「うん…いいよ」
無理矢理に、笑顔を見せた。
風見くんに、向けて。