少女達は夢に見た。
「人形って、何で作るの?」


会議終了後、ふと気になったので友紀ちゃんに訊く。


少し唸ったあと、


「手抜きするなら段ボール、ちょっと手間かけるなら布…かな」


布か…


私達はともかく、男子の協力は望めないな。


話ながら歩き、下駄箱についた。


「一瑠?帰らないの?」

いつまでも立ったまま靴を替えようとしない私に、訊く。


「うん…柚奈、待ってるから」


「ちょろ吉?」


「あ、うん」


やけに目を輝かせるな…。


友紀ちゃんもそのあだ名使うんだ。


柚奈は“服部さん”なのに。


「じゃあ友紀も待ってる」


「柚奈を?」


「違うよ、一瑠を」


困ったように、笑ってみせた。





それからすぐに、バレー部の集団がやって来て、バスケ部も。


「でもバスケ部と美術部が仲良いなんて、変な感じ」


バスケ部の方を見たまま、そう呟く友紀ちゃん。

「だよね。私もしょちゅうそう思うよ」


「そうなんだ?」


「違う…かな。保育園の頃から、思ってた」


唯一縁の続いている幼馴染み。


だけど、たまに不安に思うんだよ。


「一瑠!」


笑顔で駆け寄ってくる柚奈。


その笑顔に、何度癒されたんだろう。


卑屈な私を、なんども助けてくれた。


本人には、自覚、ないんだろうね。


“ありがとう”


いつかちゃんと、いいたいな…。





「じゃあ友紀はもう帰るね」


「うん。じゃあね」


私が返事をする前に、柚奈がしてしまった。


「え…別にいいのに」


「じゃあね」


遮るように、柚奈がかぶせる。


私に勝ち目なんてなかった。


笑顔で“服部さん”に手を振る柚奈は、さすがというかなんというか…。

「じゃあ一瑠、また部活でね!」


「え、あ…うん!」


友紀ちゃんを引き止めることは、出来なかった。

なんか、せっかく一緒に待っててくれたのに、申し訳ないな。


柚奈に文句の一つくらいつけようかと向き直ったけど、清々しい笑顔で「ん?」とか言うから、何も言えないよ。


それに柚奈と一緒に帰るのが、やっぱり嬉しくて。


これが世に言う“利己主義”ってやつなのかな。

自分を嘲笑しても、それが覆されはしないのに。

「今日さ、外周だったんだけどね」


「うん」


「それであまりにキツくて泣き出しちゃった子までいて」


「壮絶だね。柚奈は平気だったの?」


「そりゃあね!!」


「それはよかった」


ずるい


私は、少しずるいんだ。

甘えてると、痛い目みることは知ってるのに。


私は


ずるい


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