少女達は夢に見た。
第11章 ご褒美と初恋
あっという間に夏休みに入った。


柚奈はちゃんと50点満点中35点という歩乃香ばりのなかなか良い点をとって、


約束通り、ごほうびをあげなきゃいけなくなった。


柚奈はやれば出来るこなんだな…と、しみじみ思う。


私の力なんか借りなくったって、やる気を出せば結構すごい。


そのくせ、あんまり得意気じゃなかったし、なかなか答案を見せようとしてくれなかった。


友紀ちゃんと真逆な態度。


部屋に一人、ちょっと古めのパソコンをいじる私は、そんなことをぼんやりと思い出して考えていた。


画面には“デートのおすすめスポットランキング20”


そう書かれてある。


…なんだかバカらしくなってきた。


戻るボタンを押して、そのページにさようなら。

タイミングが良いのか悪いのか、柚奈が


「せっかくだし夏休みに行こうよ」


なんて言うから、実はごほうびの方はまだなのだ。


二人でどっか出掛けよう、なんて


そんな楽しみにされたらプレッシャー。


律儀にプランを立てようとする私も私なんだろうけど。


期待されたら応えるのが義務な気がして。


某有名サイトのマップを見てみても、やっぱりここ周辺じゃ遊び場なんてない。


会員向け質問掲示板サイトをちょっと覗いて見たりもしたけど…


遊園地とか水族館とか動物園なんて無理無理無理!


福沢さんが飛んでいっちゃう。


「困らせてくれるな…」

独り言を呟いた途端、ドアがノックされた。


ちょっと焦る。


「お姉ちゃん?」


…恵瑠か。


「どーぞ。入っていいよ」


「じゃあ遠慮なくー」


パジャマ姿だった。


そうか、もうそんな時間なんだ。


パソコンやってると時間経つの速いな。


どうりでさっきから目が乾くわけだ。


「なに見てんの?」


パソコン画面を覗きこむ。


「友達と出掛けるの、どこが良いかなって」


「映画とかは?」


「それもいいけどパス。最低でもチケットとポップコーンとジュースで2000円はかかる。」


それに見てるだけじゃつまらない。


どうせだし、ゆっくりしゃべれるようなとこがいいな。


「んー…じゃあ海とかどう?」


「海?」


「電車でも乗ってさ。片道300円くらいじゃない?」


往復1000円以内なら、お昼代含めても2000円で足りるか。


「でも海に何しにいくの?」


「え?叫びに?青春っぽくない?」


「……なにそれ」


「海のバカやろー!」って叫ぶ柚奈の姿がありありと浮かんでしまった。

「え?もしかして彼氏?」


まさか…みたいな顔して口に手を当てる。


「違う」


友達って言ったじゃん。

「だよね。お姉ちゃんに限ってそんなこと…」


「失礼な!」



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