少女達は夢に見た。
それから一番近くにあったファミリーレストランに入った。


海から近くにあった訳じゃない。


一番近い所でも結構遠かった。


それでも田舎にだって歩いて探せばファミレスくらいあるんだってことを学んだ。


お昼にはまだ早いし、お店自体開店したばっかだったけど、お客さんはちらほらいる。


ブランチ?


もしくは私達みたいに暇潰しに来ているのかもしれない。


まだこみ合う時間帯じゃないし、別にいいよね?

別にお腹が空いているわけでもないのでおんなじデザートメニューを頼んだ。


それとドリンクバー。


お互い長居する気満々である。


とりあえず先にコーナーに二人で向かい、飲み物を入れてきた。


柚奈はメロンソーダ。


私はオレンジジュース。

味の好みはあんまり似てないけど、デザートの方はお金をケチって同じものにした。


ティラミス315円。


それが来る前に果たして私達は何杯おかわりするのだろう。


「でもさっきのちょっと似てた」


「さっきのって?」


唐突に私の方から話をふった。


「柚奈の中二な話」


「誰に似てたって?」


「友紀ちゃんに」


意外に柚奈も演技上手いし…。


一瞬で役に入り込めるノリとか、なんとなく似てると思った。


「なんか…あんまり嬉しくないな」


言葉通り、本当に嬉しくなさそうな複雑な顔をしていた。


人のこと“顔に出やすい”とかいって、自分の方が顔に出やすいってどうなの?


どう考えてもあえて顔に出す場面じゃないし。


「友紀ちゃんのこと嫌い?」


「どストレートだね。嫌いって言ったらどうするの?」


私を試すみたいに、いつもより落ち着いた口調で言った。


向かい合って目がバッチリ合っているのがなんだか居ずらくて、飲み物を飲むふりをして視線を外した。


「別にどうもしないけど。わけは気になるかも」

「わけ、か……」


つまり嫌いってことなのかな。


でも別段悲しい気持ちになったりはしない。


ここは友達なら怒るべきなのかな。


もしそれが逆だったら、きっと悲しくなると思う。


友紀ちゃんが柚奈を嫌っていたら、悪口を言ってたら反論するんだろうな。


「自分勝手な感じがする…のと、自分より頭悪い人基本嫌」


なんて理由だ!!


「あ、でもそれを一瑠が言ったら皆嫌いになっちゃうね」


「別に私、そこまで頭良くないよ」


「謙遜しなさんな」


そこまで頭良いわけじゃないんだけどな…。


でもそれを言ったら柚奈を遠回しにけなすことになるのか。


「じゃあ誉め言葉として受け取っておきます」


「そうするといいよ」


ははは、と棒読みっぽく柚奈は笑った。



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