あたしの心、人混みに塗れて
「今日、なんか用事ある?」

「ないけど」

「じゃあ、俺の傍にいて」


薬を飲んで布団の中に潜り込んだ蒼ちゃんが布団から手を出してあたしを手招きする。


あたしがベッドの傍に座ると、蒼ちゃんがあたしの手を握ってきた。


「昔さ、俺が風邪引いて寝込んだ時、ともったら学校休んでずっと俺の傍にいてくれたよね。後でそれがばれて、俺ととものママに怒られてさ」


くすくすと笑う蒼ちゃんを見てあたしは思わず苦笑していた。


「そんなこともあったね」

「でもさ、ともったら『そーちゃんがいない学校なんて行きたくない』って言ったんだよね。ほんとはだめだけど、俺すげー嬉しかった」

「だって、あたし昔から友達少なかったから。蒼ちゃんがいなかったら一人だから」

「ほんと、ともは人見知りだもんね。高校くらいでしょ、女子のグループに入ってたの」

「……言わないでよ」


蒼ちゃんは本当に楽しそうにくすくす笑っていた。なんだかばかにされているようで悔しい。


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