あたしの心、人混みに塗れて
家にいるときは母さんは極力体を動かすようにしているという。妊娠前と変わらず家事をこなして、座ることはあまりない。


「体が重いからって怠けてると、すぐ太っちゃうのよ」


双子を妊娠したときあまりに体が重くてだらけてばかりいたら、20キロ近く太って出産時かなり時間がかかったのだという。


そんな母さんの手前、あたしは手伝うといってもほとんど手出しはしなかった。妊婦には大変な風呂掃除や、食事の用意を一緒にやる程度だった。


「こんなんだったら、あたしの方が太っちゃうなあ」

「蒼大くんのとこに行ってくれば? 運動させてくれるでしょ?」


母さんははっきり言って過激だ。昼間だろうがどこだろうが関係なく際どいことを口にする。関係ないだろうけど、赤ちゃんに悪影響がないかこっちが心配になる。


「母さん……あたしと蒼ちゃんは付き合ってないよ」

「あら、付き合ってなくてもできるじゃない。一年半も一緒に暮らしてて何もしてないなんてことは……」

「し、してないっ!」


顔を真っ赤にさせて大袈裟なほど頭をブンブンと振った。そんなあたしを見て、母さんはケラケラと笑った。


親が言うことか!


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