あたしの心、人混みに塗れて
二人は意外にもニコニコしながら赤ちゃんを眺めていた。


しかも母さんに「抱いていい?」と言い出す始末。


母さんはニコニコしながら赤ちゃんを慎也に渡す。


慎也は恐る恐る赤ちゃんを抱く。


おとなしい子らしく、赤ちゃんはすやすやと寝たままだった。


「慎のことお兄ちゃんってわかってるのかもね」と母さんは笑っていた。


「け、絢、パス」


慎也は絢也に赤ちゃんを渡す。


「落とさないでよ」と母さんは言う。


我が家は幸せに包まれていた。


絢也が赤ちゃんを抱くと、途端に泣き出す。


「えっ、なんで?」


絢也が慌てて母さんに赤ちゃんを渡すと、すぐに泣き止んだ。


「絢のこと兄ちゃんと思われてないんじゃないの?」

「絢が危なっかしい抱き方するからよ。とも、蒼大くんにメール送れば?」

「……え?」


母さんの提案にどきりとする。


「蒼大くんも気にしてるだろうし、報告くらいしてあげたら?」

「…………うん」


気乗りはしなかったけど『赤ちゃん無事生まれました!』とメールを打つ。母さんに抱かれている赤ちゃんの写メを撮って添付した。



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