あたしの心、人混みに塗れて
「『そうや』って読むの」

「……そうちゃんが二人になるね」

「あら、ともさすがだわ。蒼大くんからもらったのよ、読み方」

「えー、ほんとですか!?」


すごく光栄です! と興奮した様子で、蒼ちゃんは母さんの手を取ってぶんぶんと振り回した。


「男の子だからもちろん強い子に育ってほしいけど、蒼大くんみたいに優しくなってもらいたいの」


母さんは蒼ちゃんを本当の家族のように思ってくれている。それは小さい頃から知っているだけでなく、蒼ちゃんが本当に優しい男の子で、いい子だとわかっているからだ。


あたしはそういう意味でも母さんを裏切ってしまっている。優しい蒼ちゃんを卑怯なあたしのせいでひどい男と思わせるようなことをしている。


お互いの家族がお互いを知り尽くしているだけに、恋愛という関係に発展してはいけなかった。あたしがもっと鈍感でいればよかったのだ。気付いていてもそうなのだと最後まで認めてはいけなかった。それを、あたしは酔った勢いで認めて、蒼ちゃんを男として見て、こんなに苦しくなっている。


自業自得じゃないか。


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