あたしの心、人混みに塗れて
ある日、お昼に購買でご飯を買ってから学部棟に行こうとしたら、蒼ちゃんとある女を見かけた。


遠くから見ていても、一目で美人とわかる女だった。蒼ちゃんはいつもいろんな女と行動を共にしているけど、今蒼ちゃんといる人は、明らかに違う雰囲気を醸し出していた。


「……あれ?」


蒼ちゃんのことで何か聞いたことがあったような……なんだっけ?


確か千晶から聞いたことは覚えている。でもそれが何のことだったかが思い出せない。


何だったかなと首を傾げていると、蒼ちゃんの隣の女と目が合った。明らかにあたしを見ていた。


「もうっ、蒼大ったら~」


そして、その女が笑いながら蒼ちゃんの腕に自身の腕を絡めて体をくっつけていた。傍から見たら明らかにラブラブな二人。恋人の光景。


……あたしに見せつけている?


目が合う前と後では明らかに女の声のトーンが違っていた。まるで、あたしに見なさいと言っているみたいに。


蒼大って呼ぶんだ。へえ……。


あたしの中で何か黒い感情が生まれる。


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