あたしの心、人混みに塗れて
「とも……一体どうしたの?」
一通り手当てを終えて、蒼ちゃんはあたしの顔を覗き込んだ。
あたしは何も言えなかった。口を開くことすら億劫だ。
「帰ってきたら、叫び声が聞こえて、何事かと思って部屋を覗いたら、床には物が散乱してるし、ともはコップを粉々に打ち砕いてるし……」
そっか。あたしは叫びながらあんなことをしていたのか。自分の声など全く耳に届かなかった。自覚したら喉がひりひりと痛んできた気がする。
蒼ちゃんがあたしの眼鏡を外して、親指であたしの目を拭った。
「泣いてたみたいだし……どうしたの? こんなこと、正気じゃ絶対やらないよね」
蒼ちゃんに言われて、零れた水は自分の涙だったことを理解した。
蒼ちゃんがあたしを見つめる。何があったのかと聞くように、あたしのことを心配するように。
蒼ちゃんは何もわかっていない。
あたしがなんでこんなに苦しんでいるのか、なんで泣いて暴れるほどに辛いのか。全部蒼ちゃんのせいなのに。本人はあたしの痛みなどちっともわかっちゃいない。
「…………嫌い」
気付いたら口が開いていた。そして、一度その言葉を出してしまったら止める術はなかった。
一通り手当てを終えて、蒼ちゃんはあたしの顔を覗き込んだ。
あたしは何も言えなかった。口を開くことすら億劫だ。
「帰ってきたら、叫び声が聞こえて、何事かと思って部屋を覗いたら、床には物が散乱してるし、ともはコップを粉々に打ち砕いてるし……」
そっか。あたしは叫びながらあんなことをしていたのか。自分の声など全く耳に届かなかった。自覚したら喉がひりひりと痛んできた気がする。
蒼ちゃんがあたしの眼鏡を外して、親指であたしの目を拭った。
「泣いてたみたいだし……どうしたの? こんなこと、正気じゃ絶対やらないよね」
蒼ちゃんに言われて、零れた水は自分の涙だったことを理解した。
蒼ちゃんがあたしを見つめる。何があったのかと聞くように、あたしのことを心配するように。
蒼ちゃんは何もわかっていない。
あたしがなんでこんなに苦しんでいるのか、なんで泣いて暴れるほどに辛いのか。全部蒼ちゃんのせいなのに。本人はあたしの痛みなどちっともわかっちゃいない。
「…………嫌い」
気付いたら口が開いていた。そして、一度その言葉を出してしまったら止める術はなかった。