あたしの心、人混みに塗れて
「とも」
蒼ちゃんの手があたしの腕を手前に引っ張った。さっきよりもかなり強くてあたしはバランスを崩した。
蒼ちゃんは男なのだ。あたしとは全く違う人間。わかっていたはずなのに、再び自覚したら余計に泣けてきた。
「嫌い、蒼ちゃんなんか嫌いだもん! もう離してよ! もうほっといて! あたしなんか嫌いに──」
最後まで言わせてくれなかった。あたしの最低な言葉はあたしの口の中で消えた。その最低な言葉を受け止めるように、蒼ちゃんはあたしと唇を重ねた。
「……嫌いになんかならないよ、絶対」
わずかに唇を離して、蒼ちゃんが呟いた。
「だから、お願い、俺を嫌いなんて言わないで…………」
蒼ちゃんも泣いていた。あたしのように泣くじゃくることなく、ただ静かに涙を流していた。
ああ、あたしは本当に最低な人間だ。
自分だけ被害者ぶって、自分だけ傷付いていると思った。自分は傷付いている側なのだから何を言っても許されると勘違いしていた。
「…………違う。違うの。そんなこと思ってない。蒼ちゃんが汚いとか、嫌いとか、そんなこと一度も思ったことない」
首を必死に横に振って独り言のように呟いた。
違うの。それは自分の方。あたしの方がよっぽど汚い。蒼ちゃんを独り占めしたくて、あたしだけのものにしたくて、一人で勝手に落ち込んで、嫉妬する自分が一番汚い。
離れたくない。あたしは腕を掴まれながら蒼ちゃんの胸にしがみついた。
「…………好き」
汚くても汚くなくても、あたしは蒼ちゃんが好きだ。
蒼ちゃんの手があたしの腕を手前に引っ張った。さっきよりもかなり強くてあたしはバランスを崩した。
蒼ちゃんは男なのだ。あたしとは全く違う人間。わかっていたはずなのに、再び自覚したら余計に泣けてきた。
「嫌い、蒼ちゃんなんか嫌いだもん! もう離してよ! もうほっといて! あたしなんか嫌いに──」
最後まで言わせてくれなかった。あたしの最低な言葉はあたしの口の中で消えた。その最低な言葉を受け止めるように、蒼ちゃんはあたしと唇を重ねた。
「……嫌いになんかならないよ、絶対」
わずかに唇を離して、蒼ちゃんが呟いた。
「だから、お願い、俺を嫌いなんて言わないで…………」
蒼ちゃんも泣いていた。あたしのように泣くじゃくることなく、ただ静かに涙を流していた。
ああ、あたしは本当に最低な人間だ。
自分だけ被害者ぶって、自分だけ傷付いていると思った。自分は傷付いている側なのだから何を言っても許されると勘違いしていた。
「…………違う。違うの。そんなこと思ってない。蒼ちゃんが汚いとか、嫌いとか、そんなこと一度も思ったことない」
首を必死に横に振って独り言のように呟いた。
違うの。それは自分の方。あたしの方がよっぽど汚い。蒼ちゃんを独り占めしたくて、あたしだけのものにしたくて、一人で勝手に落ち込んで、嫉妬する自分が一番汚い。
離れたくない。あたしは腕を掴まれながら蒼ちゃんの胸にしがみついた。
「…………好き」
汚くても汚くなくても、あたしは蒼ちゃんが好きだ。