あたしの心、人混みに塗れて
「好き……蒼ちゃんが好きなのぉ…………」


蒼ちゃんにしがみつきながらあたしは嗚咽を漏らしながらまた泣いた。嫌いなんて嘘だ。どんな蒼ちゃんでも好きだ。好きで好きでたまらない。


蒼ちゃんは右手をあたしの腕から外して、あたしの頭に乗せて、その上に自分の額をくっつけた。「わかったよ、とも」と優しい声が降ってきた。


一度溢れ出した思いは止まらなくて、あたしはひたすら泣き続けた。蒼ちゃんを好きだと思うだけでどんどん涙が溢れてくるからどうしたものかと内心困った。


どれくらい時間が経ったかわからない。とりあえず喚いたせいで声が枯れてきた頃、あたしはようやく涙も収まって、蒼ちゃんが差し出してくれたティッシュで何度も鼻をかんでようやく蒼ちゃんと向き合った。


「落ち着いた?」

「……ん」


涙は収まったけど目がショボショボする。頭もぼんやりしている。


そんなあたしの顔を覗き込んだ蒼ちゃんは「ひっどい顔だねー」と吹き出した。


「……誰のせいだと思ってんのよ」

「うん、ごめん」


蒼ちゃんは微笑んで親指であたしの目尻をそっと拭った。ひりひりする目元を労ってくれているようだ。


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