あたしの心、人混みに塗れて
「……で、どうやってその子を説き伏せたの?」

「理央は、俺がともを好きなこと知ってるから、付き合うことになったって言ったよ。最初はかなり渋られたよね。他の女と付き合っても関係は続けられるでしょって言われてさ。でも俺、ともを裏切るようなことは絶対したくないし、隠し通せるほど器用じゃない。それに、そんなことしたら余計に理央を傷付けると思った。そういうことを言ったら、ようやく折れてくれた。これからは友達として仲良くしてねって言われたけど」

「ふうん……」


自分から聞いたけど、なんだか煮え切らない。


嫉妬してんのかな、理央って子に。


今まで蒼ちゃんに抱かれて、蒼ちゃんに触れて、蒼ちゃんの一番近いところにいられた。蒼ちゃんはあたしを選んでくれたけど、あんな美人な子を手放すなんて後悔していないのだろうか。


「……とも、気分悪くした?」


蒼ちゃんがあたしの顔を覗き込むから、あたしは顔を背けて「別に……」と呟いた。


見られたくない。こんな嫉妬に塗れた顔なんて。醜いだけだ。蒼ちゃんにだけは気付かれたくない。


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