あたしの心、人混みに塗れて
「思うけどさ、付き合って半年経った今もディープキスにすら発展してないってどういうこと? 中学生じゃあるまいし」


ミニトマトを頬張りながら蒼ちゃんは顔をしかめる。


「まあ、ディープもまだの段階でともを求めて来る栗山くんもどうかと思うけどねえ」と、あくまで男でありながら女の立場でも考えられるのが蒼ちゃんだ。


「なんか……怖くて。舌と舌を絡ませるって」

「とも、お前は小学生にすらなれてない。だいたい、怖いって何よ。やってみなきゃ怖いも何もないでしょ。それとも、ともは犯された経験があるの?」

「ないこと知ってて言ってるくせに」

「当然。ともが好きになった人は全部知ってるから。ついでに、栗山くん以外の男には全部振られたこともー」


にやっと勝ち誇ったような笑みで蒼ちゃんはあたしを見てきた。


ちくしょお。自分はあたしの恋愛遍歴を網羅してるからって。


弱みを握られているみたいで悔しい。


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